人のふり見て②
やべえ。
誰もいないと思って、めっちゃ独り言を言っていたら、しかも、ちょっとよくない言葉を、真後ろに人がいた。
幸い、完全に知らない人とだったので、僕がちょっとイカれたやつだと思われるだけで済んだ。
よかった。
イカれてると思われるぐらいで済んで。
でだ。
高校生の頃、僕はバス通学だった。
ちょっと遠い学校だったこともあり、近所から同じ高校に通ってる友達はおらず、1人で本を読んだりしながら通学していたのだが、2年の途中から小学校の同級生だった子(女子)が乗ってくるようになった。
6年くらいの時に転校して、最近、こっちに帰ってきたそうだ。
残念ながら、恋心を抱くような関係ではなかったが、知らない仲でもないので、席が近くになると雑談する程度。
彼女は、よく僕にガムをくれた。
僕は当時、チョコレート以外のお菓子をほとんど食べなかったので、なんか口がチクチクするから、いらん、とか、押し付けられたものをポッケに入れたりして、結局食べなかったりしていた。
いつものようにバスが目的地に着き、そこで彼女とは道を分かち、そして僕はさらに電車に乗って、高校に向かうのだ。
な。遠いだろ。
で、高校の最寄駅に着くと、今度は10分程度歩くのだが、たまたま同じクラスの子(男子)にあった。
別に仲良しでもなかったが、出会したら一緒に登校する程度のその友人、名前は忘れたが、その子とダラダラと喋ってると気付いた。
こいつ、口が臭え。すげぇ臭え。
話をしていると、少しづつ体力とメンタルが削られるくらい臭いのだ。そいつの口が。
うわぁ〜、と思っていたら、ふと気が付いた。
「なあ、ガムいらん?もらってんけど、俺、ガム食べへんねん」
僕はさっきもらったガムをそいつに食べさせることに成功した。
そして、ふと気付いた。
(あ、俺、口臭いんや…)
確かに、僕は当時から喫煙者で、家を出て、バス停に向かうまでに一本嗜んでから、バスに乗り込んでいた。
大体の健全な高校生は、タバコの匂いが苦手である。
まして、彼女は僕の息が、臭い息がモロに当たる体勢だったのだ。
そりゃ、臭い。
それ以来僕は、一本早めのバスに乗り、彼女とあまり出くわさないように心がけた。
たまに会う日もあったが、あまり喋らないよう気をつけた。
今はもう、僕はおじさんになり、生きてるだけでおじさん臭を放つ生き物になってしまい、開き直って、そして、諦めてしまったが、あの当時は、本当に穴があったら入りたい気持ちになったものだ。
今更だけどごめん。
もはや、名前を忘れたあの子よ。
そして、ありがとう。気づかせてくれて。
名前を忘れたあいつも。
そうして、人は成長していくのである。
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